【インタビュー】黒田 幸保先生(日本キャンプ協会 広島県西部支部 はつかいちキャンプ協会理事)
グランピングや家庭菜園など、発展した自然の楽しみ方が普及している現在、教育分野でも「自然」が注目されていることをご存知ですか?
実は、「自然教育」をすることで、子どもたちにとって大切な力がついてくるというのです。
そこで今回は、日本ではどのような「自然教育」が可能なのか、自然教育に携わる【黒田 幸保先生(日本キャンプ協会 広島県西部支部 はつかいちキャンプ協会理事)】にお話を伺いました。
目次
スウェーデン発の自然教育「森のムッレ教室」が注目される理由
自然教育のなかでも最近世界的に注目されているのが、スウェーデン発の自然環境教育プログラム「森のムッレ教室」。1957年から続く長い歴史のある教育スタイルによって、自然や人間の原点を学ぶことができるとして注目を浴びています。
どんな天候でも野外で活動し、野外でどれだけ快適に過ごすことができるかを考えることで、自然と離れてしまった子どもたちに自然について考える機会を設けると同時に、「自然のなかに出かけることは楽しい」と伝えることを目的とされた学びのスタイルです。
そして最近では日本でも、その取り組みを模範とした自然教育が高い評価を得ているのです。
日本における自然教育の必要性
日本では「森のムッレ教室」に限らず、自然教育を大事にしている様子がうかがえます。保育園や幼稚園でも、自然に触れる教育をある程度行っているなか、家庭でも自然教育を取り入れる必要はあるのでしょうか。
子ども教育の専門家からみた「自然教育」の必要性とはどのようなものなのか。キャンプを通じて自然教育の素晴らしさをご存知の黒田先生に、自然教育の必要性を伺いました。
黒田先生は、自然教育に次の3つの必要性があることを教えてくださいました。
- 自然のフィールドを通して身につける、「生き抜く力」
- 自然環境のことを大切にする土台づくり
- どうしようもならない状況を、楽しむ方法を見つける
それではこの3つの必要性について、黒田先生のお考えをさらに詳しく確認していきましょう。
①自然のフィールドを通して身につける、「生き抜く力」
例えば、仲間と虫探しをする、山登りをする、キャンプをするなどの活動を通して、自分も他人も大切にする心、協力することの大切さ、臨機応変に考えや行動を変化させていく力、粘り強くチャレンジする力など、人の成長につながる力を育む機会につながります。
そもそも人間の先祖は、自然と共に生活をしてきました。そうした文化のなかにある「生き抜く力」は、文明が発展した現代でも、必要となるということが黒田先生のお話でわかりましたね。
②自然環境のことを大切にする土台づくり
あらゆるもののデジタル化が進む現代において、自然に触れる機会は格段と減っているように感じます。そのため日常生活では触れられない自然のなかでリアルな経験をすることは、知識と思想の財産ともなるのではないでしょうか。
③どうしようもできない状況で、楽しむ方法を見つける
さらに自然のなかで、いかに快適で楽しく過ごすことができるか、その力を身につけることは、心・感覚・生き抜く力を育むのに効果的だといえます。 どんな天候や状況でも、自然のなかで過ごした経験や逆境を乗り越えた成功体験は、子どもに強い自信を与えてくれると思いますよ。
すべての人生がうまくスムーズに進んでいくわけではありません。山あり谷ありの人生のなかでも、子どもたちが強くたくましく、そして楽しく「生き抜く」ことができるならそれほど安心できることはありませんよね。
自然教育には、環境問題や「人生」という大きなテーマまで、多くのことを学ぶきっかけがどこまでも広がっているということなのではないでしょうか。
理想的な自然教育のスタイルとは?
子どもが現代の日本を「生き抜く」ための力を身につけるためにも、自然教育は必要です。そのため、日常生活に自然教育を上手に取り入れていくことは理想的ともいえますよね。
では実際、どのように現代の日本を「生き抜く」ための自然教育を取り入れればよいのでしょうか?黒田先生は、「日本でできる自然教育」として、次のようなスタイルを理想としていると語ってくださいました。
①「自宅」で感じるスタイル
日常の一コマで自然を感じることも、自然教育になると考えると、ちょっとした意識から簡単に取り入れることができそうですね。また身近なものであれば、星を見るときに星座表や星座図鑑のアプリなどを使ってみるのもおすすめだといいます。
②「公園」で見つけるスタイル
それぞれの生き物の違いや、なぜそこに生えているのかを考えるようになると、分析力・思考力・集中力がついてきます。自然に目を向けるきっかけになるでしょう。
子どもが公園で、はっぱを集めてくることはよくありますよね。そういった子どもの興味関心をうまく引き出して、楽しく自然教育をしてみてはいかがでしょうか。
③「大自然」で探すスタイル
まず、紙に「ふわふわ」「ギザギザ」「もふもふ」「カチカチ」など、オノマトペのキーワドを書きます。それをくじびきにして、探してくる遊びです。子ども自身が自分で自然を探しにいくことで、感覚・表現力・想像力が育まれますよ。
街で暮らす家族であれば、せっかくの大自然を目の前にして、自然教育の時間にしない理由はありませんね。しかし、大自然が身近にない場合でも、オノマトペ探しは近所の公園でも楽しめそうですね。
上記3つの「日本でできる自然教育」なら、今日からでもすぐに自然教育を実践することができますね。
自然教育とはかしこまったものでなくても、いつもの遊びに少しスパイスを加えるだけでも成立するものなのではないでしょうか。
「自然教育」はいつでもできる素敵な教育
「自然教育」は、現代社会を生き抜く力や自分自身を知ることができる素敵な教育スタイルということが黒田先生のお話からわかりましたね。自然教育の良さは、おうちで簡単にはじめられるところにもあります。「森のムッレ教室」のように他のお子さまとも関わりながら本格的な「自然教育」をするのもいいですが、まずは「自宅」「公園」「山・川・海」と身近な自然ではじめられる自然教育からはじめてみてはいかがでしょうか。
そして最後に、自然教育を通した親子の関わりについて、黒田先生からいただいたメッセージをご紹介します。
黒田先生のメッセージからは、お母さんお父さんへのエールが溢れています。親子で一緒に高めあえる「自然教育」。ぜひ今日からはじめてみませんか?
参考元
一般社団法人日本野外生活推進協会|日本野外生活推進協会(森のムッレ協会)「森のムッレ教室とは」
http://mulle.sakura.ne.jp/mulle