AIをはじめ、テクノロジーが進化し続ける、これからの未来。それらを生みだす人材の育成に効果的だといわれているのが、STEAM教育(スティーム教育)です。
そのなかでも、想像力の成長を促す実践的な「工作(アート)」は、ご家庭でも気軽に取り入れることができるため、SNSでも話題にあがっています。
そこで今回は、おうちでできるSTEAM教育の工作遊びをご紹介します。
目次
【STEAM教育】工作のポイント
STEAM教育の工作をご家庭でする際には、次の2つのポイントを意識しましょう。
- 主体性
- 想像力
子ども自身が工作に取り組む、「主体性」を促す
大人に決められたものを作るのではなく、子ども自身が主体となって、制作に取り組むことがとても大切です。
作りたいものを作るために、どのような工夫をすべきか。子どもは自分自身で気づく経験を繰り返し、そこで身につけた知識を自分のものにします。またこうすることで、自分の考えを表現する力(プレゼンテーション能力)も養われるのではないでしょうか。
正しい作り方や問題の解決方法を知っている大人は、つい口を出したくなるかもしれませんが、安全面以外ではぐっと我慢し、子どもの考えを見守りましょう。
「自由なアイデア」を引き出す
大人の想像するものへ、近づけようとしてはいけません。子どもならではの想像力を活かして、大人の思いつかないアイデアをどんどん引き出せるようサポートしましょう。
子どものどんなアイデアにも、「面白いね!」「それ、すてき!」「やってみよう!」「もっと〇〇するにはどうしようか」などの、声かけを取り入れてみてください。
そして、こうした子どもの主体性と想像力を活かした工作のために、親は「ヒントを与える」存在になってください。子ども自身が、「何ができるのか」「どうやったらできるのか」をじっくり考える時間を与えてあげましょう。
その最初のステップは、「何を作るか」を考えること。まずは、自宅にある材料を並べて、何を作るのか、子どもと一緒に考えてみることからはじめてください。
そこで次は、ご家庭にあるものでできる工作を2つご紹介します。
【工作材料:段ボール】ぬいぐるみのおうちを作ろう!
どこのご家庭にもある「段ボール」は、自由自在。想像力をフル活用すれば、様々なものに変身します。これを使って、子どもの好奇心をゆさぶるヒントを与えてください。例えば、「ぬいぐるみのおうち」。
このヒントをもとに、子ども自身の考えを形にしてみましょう。
段ボールでつくる「ぬいぐるみのおうち」のアイデアをサポートしよう
「段ボール」「ぬいぐるみのおうち」という課題をもらって、アイデアを膨らませることができる子もいれば、考え込んでしまう子もいることでしょう。
そういった時は、このような声がけをしてみてはいかがでしょうか。
「どこから入るの?」
家といえば、中に入るための場所がスタート地点ともいえますよね。それを大人が考えると、まずは「ドア」が思いつくのではないでしょうか。
しかし、中に入るための場所は、必ずしもドアとは限りません。窓であったり、縁側であったり、はたまた屋根があいて空から入る、なんて楽しい発想をする子もいるかもしれませんね。
こうした大人では思いつかないアイデアも大事にするため、「ドアがないねー」ではなく、「このおうちは、どこから入るの?」と、子どものアイデアを聞き出す声かけをしてみましょう。
〇〇ちゃんのおうちは、どうかな?
次に、自分のおうちや、想像するおうちと比べるように声がけをしてみましょう。例えば、おうちの中に何があるか。テーブルやイス、キッチン、お風呂など、子どもが最初に思いつく「家といえば」のアイテムは何でしょうか。
ただしこのとき、「何もないね!」といってしまうと、子どもの気持ちを傷つけてしまうかもしれませんよね。そこで、ここでも疑問形。
「おうちのなかに、何があるかな?探検してみようよ!」と、好奇心を促す形で、子どもの想像力を引き出してみてください。
【工作材料:牛乳パック】動くものを作ってみよう!
次に使うのは、「牛乳パック」。これも、多くのご家庭にある工作の定番アイテムですよね。ここで与えるヒントは、「動くもの」。あなたのお子さんは、どんな動くものを思い浮かべるでしょうか。子どもが想像するもの、考えるものを形にしてみましょう。
牛乳パックでつくる「動くもの」のアイデアをサポートしよう
動くものを作ろうとすると、大人は難しく考えがちです。タイヤは?羽は?電池をつける?……、そんなに難しく考えなくていいのです。
失敗も、経験。子どもが自分の表現したいもの、考えているものを形にするため、試行錯誤することがSTEAM教育を行う意義となります。
そこで、このような声がけで、子どもの表現をサポートしてみてください。
本物は、どうなっているかな?
芸術には、答えがありません。そのため、当然失敗してもいいのです。
しかし、創作物を見て、そこで発見したことをもとに、想像力を働かせて形にするというのも良い経験となることでしょう。その観点からSTEAM教育では、「観察力」を養うことも、より良いクリエイティブを生みだすために効果的だといわれています。そして、そこから得た情報を言葉にすることも、想像力を膨らますきっかけとなることでしょう。
そこで子どもが作りたいものにより近い、実際の「動くもの」を観察する機会を与えてください。例えば、地面を走る車型のものを作りたいとしましょう。日常生活で見かけるバス、車はもちろん、工事現場で使う特殊車両もアイデアのヒントになるかもしれませんね。
さらにその形について、気づいたことを親子で話し合ってみましょう。こうしたコミュニケーションも、自分の表現を言葉にする対話力につながりますよ。
どうして、こうしたいの?
STEAM教育では、子どもが技術を身につけるのではなく、「感性を磨く」ことが大切だとされています。そのため、作品の評価は必要ないのです。
一方で、子どもが「どうしたいのか」、「なぜ、そう考えるのか」といった論理的思考力を促すことが大切だとされています。そこで、子どもが作ったものに対して、「すごいね~」と褒めた上で、このような声がけをしてみてはいかがでしょうか。
「どうして、こうしたいと思ったの?」「この動きは、何で気づいたの?」
これを作った際に考えたこと、気づいたことを振り返ることで、次の工作を作る発想力にもつなげることができます。
そして、どんな工作をするにしても、忘れてはいけないのが、最後まで作るということ。
失敗してもいい。不格好でもいい。作ったこと自体を最大限に褒めてあげることで、子どもの自信となり、あきらめない「忍耐力」を身につける機会にもなります。
こうした点も、STEAM教育を通じて身につけることができる財産といえるでしょう。
想像を形にするSTEAM教育の工作
STEAM教育のアートでは、子どもが自分で気づき、制作する「主体性」と、イメージから形を作り出す「想像力」を意識することが大切だと考えられています。こうした工作という経験を通して、子どもは未来に役立つ多くの知識を身につけることでしょう。
思考錯誤しながら、想像したものを形にする。これが、新しいものを生みだす力となり、子どもの未来につながるのです。そのために大人は、子どもの喜びはもちろん、失敗も、挫折も含めて、温かい目で見守ってあげることが大切になります。
大作を作ろうとするのではなく、楽しい記憶となる工作の時間が実現できるといいですね。
参考元
株式会社イノビオット|みらいい「STEAM(スティーム)教育とは?アートが学びに与える影響とは」
株式会社日経BP|日経DUAL「子の感性高めるアート教育 家庭でできること」
https://dual.nikkei.com/atcl/column/17/101900011/040900124/
日本STEM教育学会|「STEAM教育におけるアートの可能性の一考察」
https://www.j-stem.jp/wp/wp-content/uploads/2018/10/R15.pdf
株式会社マガジンハウス|HanakoママWeb「STEAM教育で育てる斬新な発想力 カギはアート【気になる!教育ニュース】」
https://hanakomama.jp/column/education-news/79936/