教育

子どもが主体的に学ぶ「探求的な学び」を成功させるポイント

【インタビュー】大村 拡衣先生(株式会社granDeclic 代表取締役)

 

日本の学校教育において、段階的な移行が進んでいる「新学習指導要領」。そのなかでも注目されているキーワードが、『探究』です。新たな学習指導要領で必要とされる『探求』とは、どのような学びなのでしょうか。

 

今回は、そんな『探求的な学び』を成功させるポイントについて、子どもの教育の専門家である【大村 拡衣先生(株式会社granDeclic 代表取締役)】にお話を伺いました。

 

 

子どもにとって「探求的な学び」が必要な理由

新学習指導要領では「総合的な学習の時間」を中心に、「探求的な学び」を重視するよう考えられています。

では、「探求的な学び」とは具体的にどのような学びなのでしょうか。今回お話を伺った大村先生いわく「探求的な学び」とは、次の要素を持つものだといいます。

 

①個人の資質や能力を引き出す

大村拡衣 先生
自分で探求する学びは、知識を習得するだけでなく、一人ひとりの【思考力・判断力・表現力】を養えると期待されています。 こうした力を養うことで、個人が持つ資質・能力・自信を引き出せるようになるのではないでしょうか。

 

②主体的に生きる土台となる

大村拡衣 先生
社会や身の回りのものに関心を持って自ら学ぶことは、自分の意志、考えで動く思考を養うことが期待できます。これにより、人と関わりのなかで自分らしく生きる土台を作れることでしょう。

 

探求的な学びでは、体験・作業を通じて子どもの興味を引き出すことがポイントのようですね。一人ひとりが何かしらの発見を繰り返しながら、次の学びにつなげていくことが大切に。こうした一連のプロセスを体験することによって、問題・課題の本質的な理解ができるようになることでしょう。

 

探求学習が必要とされている理由

次に、現代において探求的な学び(探求学習)がなぜ必要だとされているのか、大村先生のご意見を伺ってみました。

 

大村拡衣 先生
探求的な学びは、子どもたちのになかにある潜在的な能力を存分に引き出す上で、効果的な学習方法といえます。幼少期から探求的な学びを取り入れることで、個人が本来持っている資質や能力を存分に磨けることでしょう。

こうした学びによって、自分を取り巻く社会をより身近に感じながら、自ら道を切り開く土台を育むことができるのです。

 

探究的な学習では、次のような生きるために必要な力を養うことができると考えられています。

  • 身近にある課題を発見して解決する力
  • 情報収集力
  • 論理的思考力
  • コミュニケーション力
  • 表現力 など

またこうした力を活用して、自ら課題を設定しながら探究的な学習に取り組むことで、自己学習力も身についていくのではないでしょうか。

 

「探求的な学び」と、従来の学びの違い

教科学習では、各教科固有の知識や個別のスキルを学ぶことで、教科に合った問題解決能力や学び方、考え方などを育むものといわれています。

一方、誰かに言われるのではなく、学びを自分で探求する「探求的な学び」は、自ら問題を見つけ、課題の追究・解決・探究を行う学習といえるでしょう。

 

つまり探求的な学び(探求学習)では、教科の境を持たず、あらゆる方面から問題を解決することができるのです。

 

 

【実践編】探求的な学び方

「探求的な学び」では、子どもが目的意識を持ち、主体性を持って学習できるようになります。「探求的な学び」の力を実生活における様々な場面で活かすことができれば、学ぶことの楽しさが理解できるようになるでしょう。

 

では実際に、探求的な学びにはどのような方法があるのでしょうか?大村先生がおすすめする2つの具体例をみてみましょう。

 

具体例① 気になるテーマ(課題)について、話し合ってみよう

大村拡衣 先生
探求的な学びには、「答えを導くまでの過程に重要な学びがある」という考えがあります。そのため、答えを見つけるプロセスとして「遊び」が重視されているのです。

【学び方のアイデア】

まずは、大人と子どもが共に気になるテーマ(課題)について話し合ってみましょう。

この際のポイントは、次の2つです!

ポイント

  • なるべく多くのアイデアが出るように声がけをする
  • 子どもが言ったことをわかりやすく言い換え、話し合った内容を整理できるようサポートする

そして、子どものアイデアは、紙に書き込んでいきます。この際、文字だけではなく、絵や図も使って、紙一面に書き込むと良いでしょう。

 

具体例② 【実験】皮をむいたみかんと皮つきみかん、浮く?浮かない?

大村拡衣 先生
物事を探求する学びの基本として、「実験」があります。実際のものが、どうなるのかを自身の目で見届けることで、自分自身の発想と観点でより細かな点まで理解ができることでしょう。

【学び方のアイデア】

■実験のテーマ

  • 皮をむいたみかんと皮つきみかんが、水に浮くか浮かないか

■用意するもの

  • 皮をむいたみかん
  • 皮つきみかん
  • 水を入れた大き目の容器(みかんが2つ入るもの)
  1. まずは実験の結果を推測してみましょう。そのとき、なぜその結果になるのか、理由も一緒に考えます。
  2. 実験をしてみましょう。実際にどうなるのか、よく観察をします。
  3. 予想と実際の結果を比べてみましょう。予想と違う場合、何が違うのか推測してみましょう。
  4. みかんの性質について、ネットや図鑑などでも詳しく調べましょう。
  5. この仕組みを使って、どんなものを作れるのか考えましょう。
  6. 最後に、予測や実験結果、調べたこと、考えたことなど、自分なりの探求結果をまとめて、発表します。

 

大村拡衣 先生
今回具体例で出したような探求的な学びを通して、知識・思考だけでなく、どう感じて何に応用できそうかまで考えてみてほしいですね。これをサポートするために、大人は子どもの意見すべてを受け入れるコーチング力や内容を整理する力も必要になってきます。

 

興味を持ったことを主体的に深く学ぶことで、その領域を通じて深い理解にたどり着く具体例①のような学習方法。

好奇心を刺激し、主体的に学ぶことで興味関心を引き出す具体例②の実験。どちらの探求学習でも、子どもの興味や主体性を大切に、子どもが主体となる学びを心がけることが重要な鍵となりそうですね。

 

 

「探究的な学び」は子どもにとって豊かな学習になる

探求学習は、最近注目されている「主体性」や「協働性」、「知的好奇心」などの非認知能力を伸ばすのにとても効果的な学習法といわれています。学校だけではなく、家でも興味を持ったことは進んで学ばせることで、あらゆることに対して興味を持てるようになるのではないでしょうか。

 

こうした探求的な学びの経験は、学習はもちろん、未来の仕事において汎用的・応用的に活かされていきそうですね。

 

 

参考元

教育委員会|実践事例 1 ● 探究的な学習「探究のサイクルを繰り返すことで 汎用的な力と深い知識の両方を得る」

URL https://berd.benesse.jp/up_images/magazine/VIEW21_kyo_2016_02_01toku_02.pdf

 

アルスクール|探究型プログラミング教室アルスクールのブログ「子どもが輝く学び、探究学習とは?」

https://arschool.co.jp/blog/archives/1910

 

お茶の水女子大学附属高等学校|「生徒と共につくる探究的な学び」

https://www.mext.go.jp/content/20200512-mxt_koukou02-000007119-10.pdf

 

  • この記事を書いた人

こども探究ラボ編集部

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