【インタビュー】一場 哲宏先生(一般社団法人 伊勢原FCフォレスト)
「体力をつけるために、スポーツをやらせたい」このように考える、お父さん・お母さんも多いのではないでしょうか。しかしスポーツは体力だけではなく、「知力」も鍛えることができるのです。
今回は子どもの「賢さ」を鍛えるスポーツの魅力について、ドイツでサッカー教育を学ばれた【一場 哲宏先生(一般社団法人 伊勢原FCフォレスト)】に伺いました。
目次
子どもの賢さを鍛える【スポーツの魅力】
スポーツは、身体面だけではなく、精神面・知能面での成長にもメリットを及ぼすといいます。では、どのような精神面を成長させてくれるのでしょうか。今回お話を伺った一場先生は、その要素の一つに、「賢さ」があるとおっしゃっています。
子どもの賢さとスポーツの関係性について、一場先生は次のように語ってくださいました。
学校でいうところの「賢い」は、テストの点数をとれるかどうかで判断されることが多いですよね。しかし日常では、それ以外にも力を発揮すべきシーンがあります。スポーツのような非日常では、そういった日常では使いきれないような力を使う経験ができるというのは、魅力的に感じます。
またスポーツを通してこのような経験をすることで、自己コントロール力が身につき、人間としての生きる賢さにつながるのではないでしょうか。
サッカーは、「賢さ」が必要
さらに一場先生は、サッカーは、その「賢さ」が必要なスポーツだと語られていました。
では、サッカーのプレーにとって賢さが必要な理由とは、どのようなものなのでしょうか?
伊勢原FCフォレスト発【4ステップ理論】とは
- 見る=全体状況を客観的にみる力で、自分が何をするべきか考える。
- 予測=全体の動き・相手・チームを見通す。色々な選択肢を持つ。
- 判断・決断=過去・未来を想像し、決める。
- 実行=プレーする。目に見える行動。
こうした4ステップ理論のなか、子どもたちには次のような変化があるといいます。
4ステップ理論は、サッカーを上手にプレーするために必要な大事な課題といえることでしょう。それを大人がしっかりと意識しながら、子どもが理解をできる道筋をサポートする。さらにこれを大人から学ぶ方法を子どもが自ら見つける。これこそ、サッカーが賢さを育む理由のように感じました。
ドイツ留学で学んだ!日本のサッカー教育と違う3つのポイント
一場先生はこのような賢さを育むサッカー指導法を、サッカー強豪国「ドイツ」で学ばれたといいます。
では、一場先生がそのサッカー強豪国ドイツへ留学されたきっかけを、伺ってみましょう。
ドイツのサッカーでは、スター選手の卵を長期的な視野を持って育てているといいます。
そういったハイパフォーマンスのサッカー選手育成を実践しているドイツ留学のなか、サッカー指導で活かせる論理的な分析力を学んだ一場先生。ドイツと、日本のサッカー教育で、違うと感じた点についてもお話してくださいました。
一場先生が感じた、3つのポイント。これについて、詳しく確認していきましょう。
自己主張
ドイツでは「ディベート授業」がよく行われます。これによって、「自己主張をする力」を鍛えているのです。自分の意見をわかりやすくまとめて説明できるようになり、感情や経験からではなく、理論的に意見を述べることができるようになります。
推進力
推進力とは、「ものごとを前へおし進める力」のことです。サッカーも生活も、自分で考えて行動していかないと道が開くことはありません。自分で決断し行動することが重要なのです。
論理的思考能力
ドイツで出会った子どもたちは、小さい子でも「なぜ?」と聞いた時必ず、何らかの自分なりの意見や考えを表現してくれます。つまり、自分の思いを言葉にできるのです。スポーツは非日常です。日常では使いきれない能力を、スポーツを通して使ってみる経験は、人間としての生きる賢さにつながるでしょう。
これらを身につけることで、「初めて直面する問題であっても、解決のヒントの筋道を立てて考えられる」「論理の飛躍なく、相手に物事を分かりやすく説明できる」などの効果が期待できそうですね。
では、本題。これらの力をはじめとする「賢さ」をサッカーで身につけるためには、どのような要素が必要になるのでしょうか?
スポーツで鍛える「賢さ」には、大人のサポートが必要
スポーツは「賢さ」を鍛えるために、有効的なスポーツだということがわかりましたね。しかし、ただサッカーをするだけでなく、家庭でも子どもの成長をサポートし応援することは大切です。
そこで一場先生から、スポーツを通して「賢さ」を鍛えるために、家庭で心がけるべきことは3つのポイントを教えていただきました。
① 親の心に余裕があること
これまでたくさんの子どもたちに接してきて、子どもの成長をサポートしたり応援したりする上で、大人の心の余裕というものが大きく関係してくると考えています。
私のサッカーチーム(フォレスト)では、「いいとこめがね」といって、自分や仲間の良い部分を見つけて練習後にシェアするという時間を必ず設けています。自分や仲間の存在を認め、自信を育むことができるとてもよい方法です。
子どもの成長をより応援するために、まずは、ご自身のいいところを1日3つずつ探すことにチャレンジしてみてください。自分をねぎらうことも大切にしてみてください。
そこで「いいとこめがね」で、自分、パートナー、子どものいいところをひとつずつ探してみましょう。自分をねぎらうことも、よりよい教育には不可欠です。
② 言葉がけ
人の成長には、小さな変化や過程を認めてくれる存在が不可欠です。そのため、行動の結果だけを評価する言葉がけではなく、結果にいたるまでの過程に注目した、次のような言葉がけを意識してみてくだい。
- 「テストのために勉強がんばったね」
- 「いい点数とろうと思ってたんだね」
- 「その科目が苦手だと気づいたんだね」など
結果にこだわらない、過程を認める声がけが、励みや自信につながることでしょう。
③ 子どもが安心と安全を感じられる環境
子どもが安心と安全を感じられる環境作りも欠かせません。どんなときも受け止めてくれる人がいる、どんなときも愛されているとわかることで、チャレンジする力の源になります。「失敗はしてもいい」、と伝えてあげましょう。
子どもはもちろん、両親も、ポジティブな言葉によって自分に自信を持てるようになりますよね。自分を信じてチャレンジするためにも、この3つのポイントのような言葉とサポートが必要なのではないでしょうか。
子どもの賢さはスポーツを通じて成長させよう
一場先生は、スポーツを体験することで、人間として生きる賢さを育んでいけると、教えてくださいました。そして家庭でも子ども応援することが、子どもたちのモチベーションとなるということも教えてくださいましたね。
そして最後に、一場先生からいただいたメッセージをご紹介します。
一場先生のサッカーチームはもちろん、子どもの特性や気持ちを理解し、最大限に成長できる環境を見つけることはとても大事。大事な我が子が伸び伸びと成長できる場所を、探してみてくださいね。