小学校教育では、2020年度から「新学習指導要領」がスタートとなります。そして気になる新学習指導要領には、STEAM教育の一環となるカリキュラムも組み込まれているのです。
とはいえ、そもそもSTEAM(スティーム)教育が、子どもにとってどのような影響を及ぼすのか、イメージがつかない方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、STEAM教育の特徴と必要性、さらには家庭で取り入れたいSTEAM教育の秘訣についてご紹介します。
目次
【文部科学省も推進!】STEAM教育とは?
STEAM教育は、次の5項目の要素からなる教育手法のことをいいます。
Science(サイエンス) ⇒ 科学
Technology(テクノロジー) ⇒ 技術
Engineering(エンジニアリング) ⇒ 工学
Art(アート) ⇒ 芸術・教養
Mathematics(マスマッティクス) ⇒ 数学
そもそもは、アメリカからはじまった教育手法ではありますが、日本でもその必要性について、長年注目されてきました。
文部科学省が進める、日本のSTEAM教育導入の取り組み
文部科学省は、2009年頃からSTEAM教育の前進となる「STEM教育(科学・技術・工学・数学)」の要素を日本の学校教育に導入すべきと検討をはじめていたといいます。
また民間施設では、子どもたちがものづくりに触れる目的として、2002年に埼玉大学が「STAM教育センター」を開設。このことからも、国だけでなく、教育者自身がSTEAM教育に注目の視線を持っていたことがわかりますよね。
そして、2020年に小学校で導入された新学習指導要領でも、STEAM教育の一環となるカリキュラムが取り入れられています。
そう! STEAM教育は、文部科学省も導入を進めているほど、必要性が期待できる教育手法なのです。
【新学習指導要領のSTEAM教育事例】
- 論理的思考力を養うために、「プログラミング教育が必修化」
- 従来の「聞く」授業から、生徒が主体的に探究する「アクティブ・ラーニング」へ
このように新学習指導要領では、STEAM教育を通じて、思考力と探求心を身に着けるためのカリキュラムが考えられています。
では、ここまで日本がSTEAM教育を必要だと考えるのは、なぜなのでしょうか。次は、その必要性についても考えていきましょう。
日本の未来に【STEAM教育が必要な理由】
STEAM教育は、日本だけでなく、世界的にも注目されている教育方針です。その理由は、子ども達が進む「未来」にあります。
日本の未来「Society 5.0」とは
日本をはじめ世界は歴史上のなかで、次のように社会(Society)が発展していきました。
- 狩猟社会
- 農耕社会
- 工業社会
- 情報社会
こうして情報社会が私たちの生活で馴染みがあるものとなるなか、近年ではさらにテクノロジーが発展。インターネットと人、物がつながるIoT(Internet of Things)や人工知能(AI)を活用する社会が見えてきました。つまり、5つ目の社会(Society 5.0)が、未来に向けて発展を遂げようとしているのです。
そして日本は、このSociety 5.0という未来に向けて、社会的な計画はもちろん、教育の面でも、Society 5.0の時代に適応する人材を育成する必要があると考えているといいます。
Society 5.0が実現すると、未来はどうなる?
そもそもIoTや人工知能(AI)は、すでに私たちの生活に溶け込みつつありますよね。お掃除ロボットが自宅にある家庭も珍しくはなくなりましたし、飲食店や商業施設の受付をロボットがやっているという光景もたびたび見かけるようになりました。
こうしてSociety 5.0が発展をしていくことで、IoTや人工知能(AI)が人間ではできない技術やサポートをしてくれる未来へと向かっていきます。
日本がSociety 5.0を実現するための課題は、「IT人材の獲得」
世界の未来に、Society 5.0が待ち受けていることは、まぎれもない事実です。しかし経済産業省の調査結果によると、IoTや人工知能(AI)を開発、作成するIT人材は、2030年に55万人も不足する(※1)といいます。
この背景からみても、STEAM教育の「T:テクノロジー」や「E:エンジニアリング」の技術を身に着ける必要性が伺えますよね。つまり、STEAM教育を学んだ人材の活躍が期待できる未来が、日本だけにとどまらず、世界全体ですぐそこに待ち受けているのです。
家庭でも取り入れたい【3つのSTEAM教育】
子ども達が進む未来のためにも、積極的に取り入れたい「STEAM教育」。しかし日本の学校教育では、その取り組みがまだ始まったばかりです。だからこそ、学校教育だけに任せるのではなく、ご家庭でもSTEAM教育を心がけてみてはいかがでしょうか?
そこでここからは、ご家庭で簡単に取り入れることができるSTEAM教育のポイントをご紹介します!
ご家庭でできる具体的なSTEAM教育
STEAM教育の基本は、「主体性」「探求心」「思考力」です。生活や日々の遊びのなかで、この3つの要素を意識して、次のような心がけを実践してみてください。
① 探求心を促す質問
STEAM教育で大切なのは、「教える」のではなく、子どもが自身が主体的に答えを「気づく」ことです。そのため、帰り道やお散歩、テレビを見ているときなど、日常生活のなかで子どもが答えにたどり着けるように、「探求心を促す質問」でサポートしてあげましょう。
例
虫を見つけた子どもに対して、「この虫は、何をしているんだろう?」「この虫は、なんていう名前なんだろう?」と質問をする
② 子どもが興味を示した物を形にする
子どもは、好きな物や目新しい物を見つけると、目をキラキラと輝かせますよね。例えば、きれいなお花や、かわいい動物を見かけたとき。
こうして子どもは主体的に興味を示したタイミングを活かして、興味を持った物を形にすることで、子どもの探求心を刺激してあげましょう。
例
・外で見かけた花をじっくり観察しながらスケッチする
・動物園で見た動物の写真を見ながら、粘土で作ってみる
③ブロックやプログラミングトイを使って、物体が動く論理を気づかせる
最近では、単に形を作るだけでなく、「ロジック(仕組み)をつけることができるブロックおもちゃ」も販売されていますよね。ほかにも、子どもが楽しめる「プログラミングトイ」も、誕生日などのプレゼントとして人気を集めているといいます。
こうしたアイテムを活かして、「物体が動く仕組み」を学ぶことは、思考力の向上にもつながることでしょう。そして、その工程のなかで失敗をしたとしても、それもまた論理的思考を成長させるきっかけへとつながるのではないでしょうか。
例
・段差や障害などの難しい場所も作りながら、より長いオリジナルのドミノコースを作る
・身近な物体(家や遊具など)や乗り物をテーマに、ブロックで制作
子どもの未来をつくるSTEAM教育へ
STEAM教育は、文部科学省が新学習指導要領にその要素を取り入れるほど、その必要性が注目されています。さらに最近では、プログラミング教室や科学教室といった習い事や、プログラミングトイやタブレット教材など、ご家庭でも気軽にSTEAM教育に取り組めるようになりました。
だからこそ今、ご家庭でもSTEAM教育を心がけることで、情報、科学の技術が求められる日本の未来「Society 5.0」において、お子さんの活躍の場を増やすサポートができるのではないでしょうか。
日本の未来を担う子ども達にとって、STEAM教育を学ぶことは、有意義な経験と実績になると思いますよ。
(※1) 経済産業省|IT人材需給に関する調査(平成31年4月)「(表4)従来型 IT 人材と先端 IT 人材の需給ギャップ(2030年時点)」 調べ
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/gaiyou.pdf
参考元
埼玉大学|STEM教育研究センター
http://www.saitama-u.ac.jp/iron/modules/vssections/uploads/STEMv3.pdf
文部科学省|萩生田臨時議員提出資料「Society5.0時代の教育・科学技術の在り方について(令和元年11月13日)」
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/1113/shiryo_06.pdf
内閣府|「Society 5.0」
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/