「うちの子、やさしさが足りない?」
一人っ子の女の子を持つママから、こんな相談をされました。
「娘も6歳になったのだけど、少しやさしさに欠ける気がして不安なの」
話を聞いてみると、ママが一生懸命作ったごはんも「おいしくない」と言って食べなかったり、久しぶりにおばあちゃんから電話がかかってきても「今テレビがいいところなの!」と言って出なかったり。また、ママが重い荷物を持って息を切らしていても、知らんぷりなのだそう……確かにこれでは、ママも悲しい気持ちになってしまいますね。
子どもはその時の気持ちに正直なだけ
でも、子どもには全く悪気がないのです。そのときの本当の気持ちを言っているだけだし、ママが持つ重い荷物にも気が付いていないのです。
子どもが他人の気持ちがわかるようになるのは、5歳を過ぎてからだと言われています。ですから、このタイミングでじっくりと「やさしさ」や「思いやり」を育てていきましょう。
「悲しい」と「嬉しい」をちゃんと伝えよう
まずは、ママの素直な気持ちを子どもに伝えることからはじめてみませんか。
「ママ、一生懸命ご飯を作ったから、おいしくないと言われると悲しいよ」
「おばあちゃんは○○ちゃんの声が聴きたかったんじゃないかな。○○ちゃんに電話に出てもらえなくて、おばあちゃんは今どんな気持ちかな。ママならとても悲しいな」
そんなふうに、「悲しい気持ち」を子どもにちゃんと伝えなければ、子どもは、「自分のしたことで、誰かを悲しませてしまった」ということに気が付くことができません。ママの気持ちを素直に伝えることで、子どもは他人の気持ちになって考えることができるようになっていきます。
そして子どもに一番伝えてほしい気持ちは、「嬉しい気持ち」です。
「荷物を持ってくれて、ママ嬉しいよ。ありがとう」
「お手伝いをしてくれて、とっても嬉しいわ。ありがとう」
自分のしたことで、誰かを喜ばせてあげることができたという体験が、「やさしさ」や「思いやり」につながります。
「嬉しい気持ち」は、どんどん声に出して言いましょう。たとえばパパからやさしくしてもらったときにも、たくさん「ありがとう」を言ってください。子どもは日常にあふれる「ありがとう」のことばから「やさしさ」や「思いやり」がどういうものなのかを学び取っていくのです。
「悲しい気持ち」から多くを学ぶ
ところで、悲しい気持ちを経験したことがない子が、他人の悲しみを同じように理解できるのかと言えば、それはやはり無理があると思いませんか。
かわいいわが子が悲しんだり、傷付いたりする姿は見たくないですよね。でも、そうなることを全て回避してしまうような母にはならないでほしい。そんな経験こそが、他人の痛みがわかる人間を育てるのだと思って、子どもをそっと見守りましょう。
そうすることで、子どもは「やさしさ」や「思いやり」だけでなく、「強さ」をも身に付けていくのですから。