子どもの理解のしやすさから注目を浴びている【タブレット授業】。実際の小学校教育では、まだまだ本格始動とはなっていないものの、ご家庭で取り入れている方も多いのではないでしょうか。
しかし、タブレット授業だけがベストというわけではありません。従来スタイルの紙を使った学習と両立することで、より効果的な学習ができるとされています。
そこで今回は、タブレット授業の特徴を確認しながら、紙学習と両立する必要性と方法を考えていきましょう。
目次
【日本の小学校教育】タブレット授業の準備は万全?
文部科学省が発表した調査結果によると、日本の小学校教育では、タブレット授業をはじめとする教育用コンピューターを1台につき6.1人で使っている状態だといいます。(文部科学省調べ 平成31年3月1日時点 ※1)
この情報から考えると、日本はタブレットやパソコンといったコンピューターを使った授業の環境整備が十分ではないことが伺えますよね。
一方で、2020年から導入された新学習指導要領では、「プログラミング」が必修化されました。こうした背景のなか、日本のコンピューター環境整備がどのように進展していくのか、気になるところでもあります。
しかし、そう焦りすぎることでもありません。たしかにタブレット授業は、テクノロジーを生みだす未来に向けた人材育成において大切なものではあります。しかし実際には、従来通りの授業スタイルとバランスをとって導入することが、有効的だといわれているのです。
タブレット授業に頼りすぎず、「紙学習」も大切に
タブレット学習は、次のようなメリットがあるとされています。
- ゲーム感覚で楽しく学べる
- 物の動きや仕組みを理解しやすい
- 同じ問題を何度も繰り返しできる
- 遠くにいる人ともコミュニケーションがとれる など
現代のテクノロジーを活かしたタブレット学習は、教育の面でも大変注目されています。特に現在のコロナ禍においては、自宅にいてもインターネットを通じて、教師や他の生徒と遠隔で授業が受けられることから、タブレット授業への期待も高まっていますよね。
しかし、タブレット授業への注目は、従来の学習スタイルを否定するものではありません。なかでもプリントやドリルといった「紙学習」は、まだまだ必要があるものとして考えられているのです。
紙学習の必要性について
タブレット授業によって、ペーパーレス化が進むのは、効率的には良いことのように感じますよね。プリントや教科書、ドリルを多く持つと重いので、子どもにとって持ち運びが大変になるというデメリットもあります。
しかし、紙学習にも大きなメリットがあるのです。
それは、「脳に記憶が残りやすい」という点。紙で学習をするということは、鉛筆を持って手を動かしながら、文字や図を書きますよね。実は、この「手を動かす」という動作が、脳への大事な刺激となるのです。
タブレット授業の普及で「想像力が低下」が心配
さらに子どもがタブレットを使いこなすようになると、インターネットで何でも調べることができるようになります。もちろんこうしたスキルも、将来に役立つものですよね。
しかし、「子ども」という観点でみると、インターネットで何でも簡単に知ることができるというのは、想像力の低下にもつながる要素だと考えています。
わからないことは図鑑で調べる、実際に見る、こうした経験から子ども自身が答えを発見し、想像することも大事な学習だと考えられています。こういった意味でも、紙でできた重い図鑑や辞書は、大事な役割をするわけですね。
とはいえ大前提として、最新のテクノロジーを使ったタブレット授業にも多くのメリットがあります。だからこそ実践すべきは、タブレット授業と紙を使った授業の両立。
タブレット授業のデメリットを、紙を使った授業、学習で補う。またその反対に、紙を使った授業のデメリットを、タブレット授業、学習で補うことが、理想的な学習スタイルといえるのではないでしょうか。
【役割が違う?】タブレット授業と紙学習を両立させる方法
タブレット授業にも紙学習にも、それぞれメリットとデメリットがあります。だからこそタブレットばかり、紙ばかりに頼らず、それぞれの良さを両立した学習が理想的だといえます。そのために必要なのは、それぞれの役割を見極めることです。
【タブレットと紙】役割の違い
タブレットに表示される情報と紙に書かれた情報では、脳の認識が異なるといいます。
- タブレット:ざっくりと内容を把握する「パターン認識モード」
- 紙:正解や間違えをみつける「分析モード」
では、この2つの認識の違いについて、もう少し詳しく確認していきましょう。
タブレット:「パターン認識モード」
脳のメカニズムで考えると、タブレットはディスプレイから発する直接的な光を見るため、その情報の流れをざっくりと捉える傾向にあります。すると、スピーディーに必要な情報を得ることはできても、細かい情報まで注意がいかないとされているのです。
そのためタブレットは、算数の仕組みやひらがなの形をざっくりと捉える役割として有効的といえるでしょう。
紙:分析モード
紙は、天井の照明や、窓から差し込む光といった、周囲の光が紙を照らし、その屈折した光を目が捉えることで情報を認識します。すると情報の間違いや正しい回答を得るためにはどうすべきか、脳が分析するようになるわけです。
さらに手を動かして脳を刺激すると、記憶のインプットにも効果的といわれています。
そのため紙を使った学習は、手を動かしてインプットや間違いを正すという役割があるといえるのです。
タブレット授業と紙学習を、どう両立する?
では次に、タブレット授業と紙学習をどのように両立すべきか考えていきましょう。
冒頭にお話した通り、そもそも日本では、タブレットをはじめとするコンピューター授業の環境整備がまだまだ十分ではありません。特に小学校低学年では、学習の基礎を学ぶ紙を使った授業が多くなるため、コンピューターに触れる機会は多くありません。
そのため、学校によるタブレット授業を期待するのはもう少し先と考えて、まずは自宅でタブレットを使って、数字や言葉など知識の仕組みをざっくりと捉える「予習」を心がけてはいかがでしょうか。幼児期や小学校低学年のうちに、ざっくりと学習内容の仕組みを捉えることができれば、その後に学校やドリルで身につける知識のインプットもよりスムーズになるかと思いますよ。
タブレット授業、焦らなくても大丈夫!
日本の小学校教育では、タブレット授業よりも教科書やプリントといった紙を使った従来式の授業の方がまだまだ一般的です。
しかし、この現状に焦って、タブレット学習を無理に進める必要もありません。なぜなら、タブレットから得た情報は、ざっくりと内容を捉える「パターン認識モード」、紙から得た情報は、正解や間違いを探し出す「分析モード」と脳の認識が異なるからです。
つまり、タブレットと紙では役割が異なるため、どちらかに力を入れようとするのではなく、2つのメリットを両立した学習が有効的なのではないでしょうか。
※1 文部科学省|平成30年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(令和元年12月)
参考元
株式会社イノビオット|ODS Direct「「紙で勉強」と「タブレット学習」の違いは何? それぞれのメリット・デメリットをもとに解説」
https://biz.ods.co.jp/page.php?pId=268
ミカサ商事株式会社|G-Apps.jp「【ICT教育とは?】ICT教育の意味やメリット、デメリットを優しく解説!」
https://g-apps.jp/column/ict-merit-demerit/#ICT-3
株式会社スタディーハッカー|STUDY HACKER「"タブレットで勉強" ってほんとうに効果はあるの? "紙で勉強" と科学的に比較してみた。」
https://studyhacker.net/columns/edtech-notebook